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気の迷いなんかじゃない。この気持ちは本当だ。しかし、いい加減にしないと痛い目を見そうである。
俺の名前は立花敦。39歳だ。
薬品会社で営業をしている。企業向け案件を担っていて、皆からは頼り甲斐があると評価されている。リピートして注文をしてくださる企業も多い。俺の仕事は順調と言えた。
しかし、仕事に没頭しすぎて家庭を蔑ろにしてしまっている。今年五歳になる息子がいるが、構ってくれない父親が嫌いなのか、触れようとすると「イヤ!」と拒否をする。
どうしたものかと悩んでいるところに同僚の榊が肩を叩いた。
「よう、今日暇か?」
飲みへの誘いだった。俺はまた家に帰るのが遅くなることに抵抗を持ったが、榊は何か話を聞いてもらいたいらしい。どうせ上司の愚痴だろうが。俺は了承をした。
榊とは入社年が同じで気が合うため、友達のような関係である。一方、仕事になると同じ営業として、どちらが成績が良いかの勝負をしているライバルでもある。
飲み屋でやはり上司の愚痴を聞きながら、俺はチャーシューをつまむ。ビールを追加注文すると、榊もベロベロに酔いながら自分もお代わりと手を挙げる。
「ほら、もう帰るぞ」
俺より背が高く体格も良い榊を引きずるように背負って帰り道を歩く。榊は気持ちよさそうに接待用で歌う昔の曲を口ずさんでいる。俺も思わず一緒に歌った。
家に着くと、玄関に鍵がかかっている。時刻を確認すると、夜の23時である。随分長く飲んだなと思いながら榊に鍵を要求する。それを受け取って鍵を開けると中は真っ暗だ。
いつもなら、榊の妻である智子さんが出迎えてくれるはずである。俺は榊を背負いなおすと、玄関で靴を脱いだ。
「智子さん……?」
電気を点け、呼びかけながら彼女を探したら、リビングのソファで丸まっていた。
眠ってしまった榊を床に寝かせると、智子さんの方へ近寄る。
「智子さん」
揺すったら、彼女が薄く目を開けた。いつもは真っ白い陶器のような肌をしている彼女の頬が赤く色づいている。まさかと思って、失礼と断っておでこに手を当てた。熱い。
「毎度すみません。主人はそこに置いておいてください。後で私が運びますので……」
「いや、そんな体調じゃ立ち上がるのも大変でしょう。俺が寝室に運んでおきますから」
「ありがとうございます……」
彼女は本当に辛そうに熱い息を吐いている。その息が俺の頬をなぞった。不快には感じなかった。
榊をベッドに運んだ後、智子さんの元へ戻る。
「今日、何か食べましたか? ああ、熱さまシートも貼らないと」
「何も食べていません。熱さまシートは薬箱の中にあります」
俺は彼女が指さした箱からシートを取り出し、彼女の額に貼る。
あとは食事だ。弱っているときこそ食べなければならない。
俺は失敬して勝手に冷蔵庫を開けた。冷凍のうどんがある。これでいいだろう。他人の家のキッチンを使うのは抵抗があったが、今は非常事態である。うどんを温め、めんつゆをかける。
簡単なもので申し訳ないと心の中で謝りながら、智子さんの前のローテーブルにうどんを置いた。しかし、彼女は一向に手を付けようとしない。仕方なく、俺は彼女を抱えるようにしてソファに座らせる。そして、ふーふーと息を吹きかけて冷まし、彼女の口元にうどんを持っていく。口を開き、ツルっとうどんを啜った。
「美味しい」
「良かった。もっとありますから食べてください」
俺は彼女が一本うどんを食べ終わるごとに次のうどんを口に入れてあげた。三分の二ほど食べたところで彼女はごちそうさまをした。
彼女は座っているのも辛いのかまたソファに横になった。
「智子さんベッドに行きましょう」
歩けそうにない彼女を抱きかかえた。女性を持ち上げるのは初めてだった。妻でさえない経験だ。智子さんはなんて軽くて細いのだろう。折れてしまいそうで俺は緊張した。
寝室に入り、ベッドにゆっくりと横たえる。そのとき、靴下で滑ってしまった。
ぼすん。
おそるおそる目を開くと、目の前には智子さんの愛らしい真っ赤な顔。彼女の息が耳にかかる。ぞわりとした感覚が体を駆け巡る。俺は慌てて起き上がった。腕と腕の間には智子さん。まるで俺が押し倒しているような態勢だ。顔が火照るのを感じる。
「うわ!」
ベッドから転げ落ちるように下りた。こんなに騒いでも、智子さんはぐったりしたままだった。
榊の寝室へ行き、頭をぶった。起きる気配がない。奥さんがあんなことになっているのに呑気な奴だ。
近くにある智子さんの顔と息の熱さを思い出して、逃げるように榊の家を後にした。
たまには家族サービスをしなければと思い、家族でテーマパークに行くことになった。会社で企画されたもので格安で行けることが特徴だ。
「いやー、いい天気ですねー」
榊が呑気に空に向かって伸びをしている。
俺の家族と榊夫婦が共に回っているのだ。妻は智子さんと仲良く話している。息子はテーマパークにはしゃいでいるのか、指をさして歓声をあげている。しかし、五歳児を野放しにするのは危ない。
俺は息子に手を差し出す。
「はぐれないようにパパと手を繋ごうか」
「イヤ!」
パンと俺の手を払った。
ため息を吐いていると、後ろから智子さんが声をかける。
「じゃあ、私と手を繋ぐ?」
俺はどきっとした。あの事件があってから智子さんのことをまともに見れなくなっている。だから、今日は榊夫婦と一緒だと聞いて朝からソワソワと落ち着かなかった。
「智子ちゃんとする」
息子は智子さんと手を繋ぐ。俺は羨ましいと思ってしまった。
「ん」
息子が手を出す。俺は意図が分からずに困惑した。
「パパかわいそうだから、智子ちゃんじゃない方の手貸してあげる」
やはりご機嫌なのか、それとも智子さんパワーか。息子が手を握ってくれるなんて。
しかし、困った状況になった。息子を挟んで智子さんと歩いている。家族に間違われないだろうか。手に汗をかいてしまった。
一日が終わり、帰りの電車の中、俺の横に智子さんが座っていたのだが疲れていたのか頭をこちらの肩に預け眠ってしまっている。
「ちょっとの間、頼むわ」
目の前に立っている榊がウィンクをする。智子さんの方へ頭を向けると、微かに彼女の呼吸音がする。
この間の熱い息をまた思い出してしまい、慌てて反対側に座る妻に話しかけた。妻の太ももの上では息子がスヤスヤと寝ている。
「パパ嫌い直らないな」
「そりゃそうよ。あんなに遅くに帰ってきて」
妻は口ではそう言うが、俺の仕事については理解してくれていた。あとは息子だけなのだが、まだ小さいため理解はできないだろう。
ため息を吐くと、「ん……」と声を漏らして智子さんが起きた。
「あら、ごめんなさい」
急に彼女が頭を上げたので、顔が至近距離にある。かーっと体が熱くなるのを感じて、慌てて顔を背ける。智子さんも下を向いて耳まで真っ赤にしている。
駄目だ。智子さんのことが気になる。電車の騒音や妻と榊の会話が遠くに聞こえ、まるで智子さんと二人きりの世界になってしまったような感覚になった。
「智子さんはどうなの?」
妻が彼女の名前を出したことで特別な空間が破裂してなくなってしまった。
「え? どうとは?」
「旦那さんが遅い時間に帰ってくることよ」
「ああ。もう慣れっこです」
ふふと彼女は笑う。ふんわりとした笑みは俺の心を暖かくした。
俺は榊を羨ましそうに見た。勝ち誇ったような笑みをニヤニヤと浮かべている。榊は分かっている。俺が智子さんに惹かれていることを。
その日は乗り換え駅で榊夫婦と別れた。
俺は苦しんだ。俺には仕事に理解のある家族がいる。
それなのに俺は智子さんにどうしようもなく惹かれている。40手前でこんなに胸が苦しくなるほどの恋を自覚するとは思わなかった。
ある日、オフレコで衝撃的な内容が回ってきた。
「榊が関西支部に異動になるらしい」
榊が関西に行くということは智子さんも行くということになる。
「それは確定事項なのか」
「そうらしい」
事実、榊が転勤準備のために大阪へ行ってしまった。
俺は足元から崩れ落ちそうだった。
夜に一人で浴びるようにビールを飲み、フラフラとした足取りで榊の家へ向かう。
俺は何をしているのだろう。家は違う方角なのに。
チャイムを鳴らすと、智子さんが出てきた。
「どうぞ」
水を持ってきてくれた。
俺はリビングのソファに座らされている。ここは智子さんが酷い熱で寝ていた場所だ。ソファをそっと撫でた。
「主人のことを聞いたんですか?」
「ええ」
「そうですか」
俺は立ち上がると、彼女に近づいた。
「どうかされましたか?」
「智子さんとぼけないで。気づいているんでしょう?」
俺の悲痛な叫びに彼女がニヤニヤと笑う。テーマパークの帰り道で見た榊の笑い方に憎いほど似ていた。
「敦さん。ええ、分かっていますよ。あなたのことなら」
「智子さん……」
俺はゆっくりと顔を近づけ、キスをする。彼女は抵抗しなかった。
「私、あなたといると熱っぽいの」
キスの間に彼女が呟く。
「俺も」
キスをするだけでもう我慢が出来なかった。勢いよく彼女の服を脱がし、すぐに挿入しようとした。
「イタッ」
「だめですよ、もっと愛してくれないと」
俺は我に返り、ゆっくりと愛撫し、彼女と繋がった。
智子さんが関西に行ってしまう。だから、これは最初で最後の繋がりだ。
俺は彼女を抱き続け、初めて朝まで帰らなかった。
「もう、元気なんだから」
「今日はもう終わりだよ」と半ば強引に帰らされた。
「え、榊だけ単身赴任?」
「ああ、智子にはこっちにいてもらうよ」
マンションを購入したばかりなので離れる訳にはいかないらしい。
「安心しただろ」
ニヤニヤとまたあの笑いをする榊。
その日は早くに帰宅した。
妻は珍しいものでも見たようである。息子は柱の影からこちらを見ている。
「大怪獣合戦買ってきたぞ。一緒に遊ぶか?」
息子が欲しがっていたおもちゃを見せると、目を輝かせて頷いた。
智子さんからはメッセージが送られてきていた。
「また看病してください」
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